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山口 尚登*; 遊佐 龍之介*; Wang, G.*; Pettes, M. T.*; Liu, F.*; 津田 泰孝; 吉越 章隆; 虻川 匡司*; Moody, N. A.*; 小川 修一*
Applied Physics Letters, 122(14), p.141901_1 - 141901_7, 2023/04
被引用回数:3 パーセンタイル:85.09(Physics, Applied)単層BMをコートしたLaBの仕事関数の低減に関して報告する。hBNでコートされた領域は、非被覆あるいはグラフェンコートされたLaB(100)単結晶領域に比べて仕事関数が低下していることが、光電子顕微鏡(PEEM)および熱電子顕微鏡(TEEM)実験から分かった。グラフェンコートに比べてhBNコートされたLaB(100)では、非常に大きな仕事関数の低下が起きることが、DFT計算から定性的に分かった。計算に酸化層を考慮すると、計算と実験の間の整合性が改善された。放射光XPSによって、我々のLaB表面に酸化層が実在することを確認した。
吉田 健太*; 外山 健*; 井上 耕治*; 永井 康介*; 下平 昌樹
まてりあ, 62(3), p.154 - 158, 2023/03
原子炉圧力容器(RPV)の中性子照射脆化因子の一つである直径3nm程度の微細な転位ループを高精度に分析するために開発したウィークビーム走査透過型電子顕微鏡(WB-STEM)に関する解説を行うとともに、当該手法と3次元アトムプローブ法(APT)及び陽電子消滅法(PAS)を組み合わせた最先端の照射脆化研究について紹介する。WB-STEMは材料内部に存在する特定の格子欠陥に対して最適な電子線の収束角及び検出角を設定することによって、従来透過型電子顕微鏡での観察が困難であった微細な転位ループの定量評価を可能にする手法である。この手法を用いて10n/m程度の低照射量から10n/mを上回る高照射量まで複数照射量条件で照射された欧州加圧水型軽水炉の監視試験片中の転位ループを分析し、APTやPASで分析した溶質原子クラスターとの比較を行った。その結果、8.210n/mから1.210n/mの高照射量領域において転位ループの数密度が顕著に増加することを明らかにした。また、測定された転位ループ及び溶質原子クラスターの数密度や寸法からモデル式に基づいて、これら微細組織の脆化への寄与を評価し、高照射量領域において転位ループが脆化に大きく寄与する可能性を示した。
Du, Y.*; 吉田 健太*; 嶋田 雄介*; 外山 健*; 井上 耕治*; 荒河 一渡*; 鈴土 知明; Milan, K. J.*; Gerard, R.*; 大貫 惣明*; et al.
Materialia, 12, p.100778_1 - 100778_10, 2020/08
長期に原子炉圧力容器の健全性を確保するためには、照射が材料に及ぼす影響を理解する必要がある。本研究では我々が新規開発したWB-STEMを用いて、中性子照射された原子炉圧力容器試験片を焼鈍中、照射誘起転位ループの観察を行った。焼鈍温度を上げるとループの割合が増加していることが確認された。また、2つのループが衝突してループになる現象の観察に初めて成功した。転位に転位ループがデコレートする現象も観察され、分子動力学シミュレーションによってそのメカニズムが説明することができた。
吉越 章隆
放射光利用の手引き, p.130 - 138, 2019/02
次世代放射光利用に関する啓蒙書の分担執筆を行う。2018年出版の論文[Appl. Phys. Lett.112 (2018) 021603]の内容を解説するとともに、次世代放射光を光源とする光電子顕微鏡の発展と環境試料や絶縁性機能性材料分析への可能性を記述する。
吉越 章隆; 塩飽 秀啓; 小林 徹; 下山 巖; 松村 大樹; 辻 卓也; 西畑 保雄; 小暮 敏博*; 大河内 拓雄*; 保井 晃*; et al.
Applied Physics Letters, 112(2), p.021603_1 - 021603_5, 2018/01
被引用回数:6 パーセンタイル:34.59(Physics, Applied)放射光光電子顕微鏡(SR-PEEM)を人工的にCs吸着したミクロンサイズの風化黒雲母微粒子のピンポイント分析に適用した。絶縁物にもかかわらず、チャージアップの影響無しに構成元素(Si, Al, Cs, Mg, Fe)の空間分布を観察できた。Csが粒子全体に分布することが分かった。Cs M吸収端近傍のピンポイントX線吸収分光(XAS)から、1価の陽イオン状態(Cs)であることがわかった。さらに、Fe L吸収端の測定から、Feの価数状態を決定した。我々の結果は、サンプルの伝導性に左右されること無く、SR-PEEMがさまざまな環境試料に対するピンポイント化学分析法として利用可能であることを示すものである。
秦野 正治*; 久保田 佳基*; 菖蒲 敬久; 森 茂生*
Philosophical Magazine Letters, 96(6), p.220 - 227, 2016/06
被引用回数:7 パーセンタイル:35.46(Materials Science, Multidisciplinary)さびにくい鉄鋼材料として原子炉シュラウドをはじめ最も実用材料として使用されているステンレス鋼SUS304の加工誘起マルテンサイト変態における中間相として六方晶相が出現することを明らかにした。SUS304に応力を加えると結晶構造が変わり、強度や延性が向上することが知られているが、機械的性質のさらなる向上のためには、この相変態のプロセスを解明することが大変重要である。本研究ではSPring-8の高輝度放射光を用いることにより、「室温において」今までないとされてきた中間相とその応力依存性を観測、さらに、ローレンツ透過電子顕微鏡観察により、結晶粒界面に生成した中間相を介して新しい相に変態する全く別のプロセスの存在を明らかにした。
田口 富嗣; 山本 春也; 樹神 克明; 朝岡 秀人
Carbon, 95, p.279 - 285, 2015/12
被引用回数:11 パーセンタイル:35.58(Chemistry, Physical)340KeVのSiイオン照射により、多結晶SiCナノチューブからアモルファスSiCナノチューブの合成に初めて成功した。また、マスクを用いたイオン照射により、一本のナノチューブ内に多結晶領域とアモルファス領域が混在する多結晶/アモルファスヘテロ構造SiCナノチューブの合成にも成功した。内部にカーボン層を有するC-SiCナノチューブについても、イオン照射を行った。その結果、照射前では、カーボン層間はチューブの長さ方向に平行であったが、照射後、チューブの径方向に平行になることから、イオン照射によりカーボン層間方向が90傾くことを明らかにした。
関口 哲弘; 馬場 祐治; 平尾 法恵; 本田 充紀; 和泉 寿範; 池浦 広美*
Molecular Crystals and Liquid Crystals, 622(1), p.44 - 49, 2015/12
被引用回数:0 パーセンタイル:0.01(Chemistry, Multidisciplinary)分子配向は有機半導体材料の様々な性能を制御する上で重要な因子の一つである。一般に薄膜材料は様々な方向を向く微小配向領域の混合状態となっている。したがって、各々の微小領域において配向方向を選別して顕微分光観測できる手法が望まれてきた。我々は、光電子顕微鏡(PEEM)法と直線偏光性をもつ放射光X線や真空紫外(VUV)光を組み合わせる装置の開発を行っている。ポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)導電性ポリマー薄膜を溶液法により作製し、偏光放射光励起によるPEEM像の観測を行った。また様々な偏光角度のUV照射下におけるPEEM像を測定した。放射光励起実験において各微小領域の硫黄S 1s励起X線吸収スペクトルが得られ、微小領域におけるポリマー分子配向の情報を得ることができた。またUV励起実験においては、偏光角度に依存して異なる微結晶層を選択観測することに成功した。実験結果はポリマーの特定の分子軸へ向いた配向領域だけを選択的に顕微鏡観測できることを示唆する。
寺内 正己*; 今園 孝志; 小池 雅人
表面科学, 36(4), p.184 - 188, 2015/04
バルク試料の状態分析を目的とし、汎用走査型電子顕微鏡(SEM)への回折格子を用いた軟X線発光分光装置(SXES)の導入を行った。この分光装置は、透過型電子顕微鏡(TEM)での軟X線分光において実績のある、不等間隔溝回折格子を用いた斜入射平面結像型分光光学系を有している。マグネシウムのL発光(50eV)において、透過型電子顕微鏡での高分解能電子エネルギー損失分光法のエネルギー分解能に匹敵する0.13eVが得られる。バルク試料からのMg-L, Si-L, B-K, Ti-L発光の測定において、固体のバンド構造の特徴を示すスペクトル測定に成功した。
向井 広樹*; 八田 珠郎*; 北澤 英明*; 山田 裕久*; 矢板 毅; 小暮 敏博*
Environmental Science & Technology, 48(22), p.13053 - 13059, 2014/12
被引用回数:112 パーセンタイル:94.42(Engineering, Environmental)福島汚染地域から採取した土壌微粒子に対しIPオートラジオグラフィーによる分析により、放射性物質を含む微粒子を抽出し、その詳細について明らかにした。微粒子のタイプは3種類あり、有機物および無機物を含む団粒構造粒子および純粋な粘土鉱物であることが分かった。これらの微粒子のTEM/SEM-EDS分析から、福島においては放射性セシウムは、主に風化黒雲母に収着していることが明らかとなった。また、収束イオンビームによる周縁部の切断と放射能量の再分析から、放射性セシウムは、その周縁部のみならず粘土鉱物中に均一に分布していることが明らかとなった。
関口 哲弘; 馬場 祐治; 下山 巖; 平尾 法恵; 本田 充紀; 和泉 寿範; 池浦 広美*
Photon Factory Activity Report 2013, Part B, P. 546, 2014/00
分子配向性は有機半導体材料の様々な性能を制御する上で重要である。一般に薄膜材料は様々な方向を向いた微小配向領域の混合状態である。したがって、各微小領域の配向方向を選択して顕微分光観測できる手法の開発が望まれている。我々は、光電子顕微鏡(PEEM)法と直線偏光性をもつ放射光X線や真空紫外(VUV)光を組み合わせる装置の開発を行っている。ポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)導電性ポリマー薄膜を溶液法により作製した。偏光放射光励起により特定方向を向くポリマー分子鎖領域のPEEM像の観測を行うことができた。各微小領域の硫黄S 1s励起X線吸収スペクトルが得られ、微小領域におけるポリマー分子配向の情報を得ることに成功した。
沢井 友次; 菱沼 章道
Journal of Physics and Chemistry of Solids, 66(2-4), p.335 - 338, 2005/02
被引用回数:14 パーセンタイル:49.98(Chemistry, Multidisciplinary)TiAl金属間化合物は高温材料として非常に有望視されているが、中性子照射による誘導放射能が少ないこともあって、原子力分野でも応用が期待されている。この材料は比較的低い温度での延性が乏しいことから、その塑性変形機構に関しては大きな関心が寄せられている。本研究では、600Cで引張変形したTi-47at%Al合金相中の交差双晶について調べた。電顕観察によれば、変形された粒中には1/2110]{111}型の通常の転位と1/6112]{111}型の双晶変形が見いだされた。幾つかの粒では異なる{111}面上の2系統の双晶の発生が見られ、これらは互いに交線が110]方向に平行な交差をしていた。圧縮変形で報告されている101]方向に平行な交線を持つ交差双晶は観察されなかった。この結果を双晶,転位それぞれの変形機構のSchmid因子の引張/圧縮方向依存性で解析している。
粕壁 善隆*; Wang, J. J.*; 山村 力*; 山本 春也; 藤野 豐*
Thin Solid Films, 464-465, p.180 - 184, 2004/10
被引用回数:9 パーセンタイル:43.98(Materials Science, Multidisciplinary)チタンと窒素の組成比によって金属性から絶縁性まで変わる不定比化合物チタンは、次世代のデバイス材料として応用が期待されている。本研究では、TIARA施設のイオン導入型電子顕微鏡を用いて、窒素をイオン注入しながら組成とともに変わるチタンと窒素の結合状態のその場観察を行い、窒化チタン膜の成長機構を追求した。超高真空装置中で膜厚100nmのTi薄膜(hcp-Ti)を作製し、その薄膜を350Cに加熱しながら62keVの窒素イオンの注入を行った。透過電子顕微鏡法で窒化チタンの成長過程を評価するとともに電子エネルギー損失分光法により電子状態を評価した。窒化による電子状態の変化をプラズモンによる損失エネルギーの評価と分子軌道計算を用いて検討した結果、窒素の注入量の増加とともにTi-Ti結合が急激に弱まり、新たにできた強いTi-N結合がhcp-fccの変態を誘起し、TiNが形成されることがわかった。
Wang, J. J.*; 粕壁 善隆*; 山村 力*; 山本 春也; 藤野 豐*
Thin Solid Films, 464-465, p.175 - 179, 2004/10
被引用回数:1 パーセンタイル:7.12(Materials Science, Multidisciplinary)チタンと窒素の組成比によって金属性から絶縁性まで変わる不定比化合物チタンは、次世代のデバイス材料として応用が期待されている。本研究では、窒素をイオン注入する前のTi薄膜の昇温過程における構造変化及びイオン注入による窒化過程についてTIARA施設のイオン導入型電子顕微鏡を用いて観察を行った。超高真空装置中で膜厚100nmのTi薄膜を作製し、その薄膜を350Cまで加熱しながら、透過電子顕微鏡法で結晶構造を評価するとともに電子エネルギー損失分光法により電子状態の評価を行った。蒸着チタン薄膜には、hcp-Tiのほかにチタン水素化物(TiH)も含まれていることがわかり、このTiHは350Cまで加熱すると、fcc-Ti副格子の四面体位置の水素原子が脱離し、水素が脱離したfcc-Ti副格子がhcp-Tiに変態することを明らかにした。さらに、62keV窒素イオンの注入を行い、透過電子顕微鏡法により構造変化の観察を行った結果、窒素の注入量の増加とともに(001)及び(110)面に結晶配向した窒化チタンが成長することがわかった。
五十嵐 慎一*; 原口 雅晴*; 相原 純; 齋藤 健*; 山口 憲司; 山本 博之; 北條 喜一
Journal of Electron Microscopy, 53(3), p.223 - 228, 2004/08
被引用回数:4 パーセンタイル:24.19(Microscopy)固相反応に伴う鉄シリサイドの形成と相変化を、透過電子顕微鏡を用いた平面観察により検討した。実験では、超高真空中にて室温でFeをSi(100)基板上に蒸着させ、その後、試料を電子顕微鏡内にて673-1073Kの温度範囲で段階的に昇温した。673Kでの加熱により、まず多結晶質のFeSi細粒が観察された。さらに973Kへと昇温するに伴い、細粒同士が合体を始め数100nmサイズの多結晶-FeSiが形成されることがわかった。こうした相変化は同時に行った電子エネルギー損失スペクトルの測定によっても確認された。
山本 博之; 山口 憲司; 北條 喜一
Thin Solid Films, 461(1), p.99 - 105, 2004/08
被引用回数:10 パーセンタイル:46.84(Materials Science, Multidisciplinary)ベータ鉄シリサイド薄膜作製においては、Fe, Si原子の相互拡散及び反応が最も基礎的なプロセスとなる。このため、配向性の高い薄膜や、良好な物性を得るためにはナノ領域における構造,組成の観測と同時にその制御が不可欠である。本発表においては、種々の方法,作製条件により得られた鉄シリサイド薄膜に関して透過型電子顕微鏡,放射光を用いたX線光電子分光法を応用し、その形成過程を明らかにした成果を報告する。併せて、Si基板表面にイオンを照射し意図的に欠陥を生成させることによってより低温で膜生成を促進させた結果、Fe原子がSi基板中に拡散し、シリサイド化する様子を温度変化させながらその場観察した結果など、従来まで演者らの研究により得られた成果についても総括的に発表する。なお、本発表はIUMRS国際会議におけるシリサイド系半導体のセッションでの招待講演である。
五十嵐 慎一*; 勝俣 敏伸*; 原口 雅晴*; 齊藤 健*; 山口 憲司; 山本 博之; 北條 喜一
Vacuum, 74(3-4), p.619 - 624, 2004/06
被引用回数:6 パーセンタイル:27.83(Materials Science, Multidisciplinary)イオンビームスパッタ蒸着法を用いて「環境に優しい」半導体であり、受発光素子などへの応用も期待される-FeSi薄膜作製を行った。従来までの著者らの検討により、イオン照射によるSi基板処理と照射後の加熱によって良好な-FeSi薄膜の得られることが明らかとなっている。本研究においては基板処理条件の最適化を目的とし、照射イオン(Ne)のエネルギーを110keVまで変化させることにより、それぞれの条件において得られた基板を用いて成膜を行った際の薄膜の結晶性及びその配向性について透過型電子顕微鏡,X線回折により検討を行った。この結果から、3keVで照射を行った場合がそれ以上のエネルギーに比べて良好な膜質となることを明らかにした。これは3keV程度の照射によって生成する基板表面の欠陥生成量とその深さが成膜のためのFe-Siの相互拡散に最も適していたためと考えることができる。
柴山 環樹*; 中道 勝*; 内田 宗範*; 河村 弘; 木下 博嗣*; 鬼柳 善明*; 高橋 平七郎*; 野村 直之*
JAERI-Conf 2004-006, p.216 - 219, 2004/03
Beは中性子増倍材料の候補材料であるが、14MeVの中性子照射を受けるブランケット内では、はじき出し損傷だけではなく核変換による劣化も起こる。近年、BeTiがBeよりも優れた機械的特性を有する材料として開発された。本研究ではBeTiの20000appmHe, 700CまでのHe照射効果、特にミクロ組織の挙動をマルチビーム超高圧電子顕微鏡を用いてその場(In-situ)観察で評価した。また、機械的特性をナノインデンタで評価した。その結果、BeTiはBeに比べてHe及び電子線の照射による欠陥生成が少ないことを明らかにした。また、機械的特性の劣化が小さいことを明らかにした。
寺内 正己*; 小池 雅人
Microscopy and Microanalysis, 9(S02), p.894 - 895, 2003/08
特定したナノスケール領域から、物質の価電子帯状態密度分布を測定することを目的とした軟X線分光電子顕微鏡(TEM-XES装置)の開発を行っている。今回、回折格子から検出器までの距離がこれまでの約2倍(エネルギー分散が2倍)となる新たな不等間隔溝ラミナー型ホログラフィック回折格子をデザインし製作した。このことにより、1000eVで0.7eVのエネルギー分解能が期待できる。
北條 智博; 相原 純; 北條 喜一; 古野 茂実*; 山本 博之; 二谷 訓子; 山下 利之; 湊 和生; 佐久間 隆昭*
Journal of Nuclear Materials, 319, p.81 - 86, 2003/06
被引用回数:18 パーセンタイル:74.43(Materials Science, Multidisciplinary)岩石型燃料の母材として注目されている安定化ZrOの照射特性を調べた。核分裂片による照射損傷は、高エネルギー領域で生じる電子励起による損傷と低エネルギー領域で生じる核的衝突による損傷の二種類に大きく分けることができる。この中で、材料の損傷は、核的衝突によるはじき出しが主と考えられている。そこで、原研が開発して、低エネルギーイオン加速器付設高分解能電子顕微鏡を用いて、加速電圧35keVのNeイオンを室温から1200Cに加熱した上記材料に照射し、各温度による損傷形態の違いを明らかにした。その結果、Ne照射では、各温度領域で材料の非晶質化を観察することができず、対照射性が非常に高いことを明らかにした。さらに、同温度の重照射で、数nmのNeバブルが生じることを明らかにした。また、1200Cの高温照射では、バブルは、大きく成長し数十nmに成長することを電顕その場観察法を用いて明らかにすることができ、この結果から、高温照射によるスエリング量を推定することが可能になった。